■避妊、去勢手術で縫合糸を使わない理由

避妊、去勢手術では卵巣や精巣に血管(動脈、静脈)が繋がっているため、その血管を止血してから切除し、摘出します。
通常手術時に止血を行う際は、血管や組織を手術用の結紮糸を用いて結紮し、切除して精巣や卵巣・子宮、腫瘍などの臓器を摘出します。
しかし手術の際に使用する結紮糸は体内に残るため異物と認識してしまい、糸の周囲に炎症を起こし、腫瘤(しこり)を形成する異物反応性肉芽腫という病気が近年増えています。
一度、異物反応性肉芽腫ができてしまうと体内で炎症や疼痛を引き起こし続けるため、手術で取り除いたり、免疫抑制剤を生涯投与し続けなければなりません。
この病気はミニチュアダックスフントやトイプードル、チワワなど多くの犬種で報告されています。
そのため当院では、結紮糸を使わずに血管、組織の止血が可能な「Tessシーリングシステム」という機械を使用しています。シーリングシステムとは、高周波電流により、組織や血管を癒合、凝固させ止血する医療器具です。シーリングした部分は切除しても出血しません。多くの動物病院ではまだ導入されていない医療器具です。

今まで手術で使用する電気メスでは、止血しながら切開できるのは1mm程度のごく細い血管のみで、それ以上太い血管では結紮糸での止血処置が必要でした。しかし結紮糸では手術時間がかかるのと、異物反応性肉芽腫を引き起こす可能性があるため当院ではできるだけ使用を控えています。
当院でのシーリングシステムは、最大7mmの血管まで止血処置が可能なため、より早くかつ安全に手術をすることができます。
シーリングシステムにより以下のメリットが考えられます。

1 避妊、去勢手術の他に、腹腔内腫瘍摘出手術や出血の多い手術での手術時間が大幅に短縮することができ、 動物の麻酔の負担が減らせます。

2 体内に糸を残さず手術が可能なため術後の痛みや違和感が少ない

実際に避妊手術でシーリング手術を行っている写真です。

1 矢印が卵巣の血管です。これからこの血管を切除するために止血をします。上の指で掴んでいるのが卵巣です。

2 シーリングで組織、血管を止血処置しています(止血時間はわずか数秒で終わります)

3 血管が止血されたのが確認できます。切除しても出血はありません。

避妊去勢手術は最も多い手術ですが皆様にとっては一生に一度です。その手術を安全にかつ迅速に行うために当院は力を注いでいます。
これから避妊、去勢手術をお考えの方は、ぜひご検討ください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。